晩秋・・・そして冬を迎えて
11月も終わりを迎えて、晩秋という季節、そして冬へ移り変わる時期となりました。
短歌誌『ぬはり』12月号を発刊しています。
12月号には、10月頃の会員の短歌が掲載されています。
今年の首都圏は猛暑でしたが、秋の過ごしやすい時期はほんの少しで、あっという間に晩秋になったという気がします。
なかなか紅葉しないなぁと思っていると、枯葉が猛烈に舞う時期を迎え、いまは枯葉もなくさみしくなった枝が目立ちます。
こうした秋から晩秋にかけては、古来からよく和歌や短歌に詠まれてきました。
春と並んで、まさしく名歌が生まれる季節だとも言えます。
藤原定家が詠んだこの名歌も晩秋について詠んだ歌です。
見わたせば 花も紅葉も なかりけり
浦の苫屋の 秋の夕暮れ
藤原定家
【訳】こうして見わたすと、花も紅葉も何も無い。ただ漁師の苫葺きの小屋があるだけの、海辺の秋の夕暮れであることだよ。
この歌は定家が晩秋のさみしい景色を詠んだものですが、なんといっても上の句の「花も紅葉もなかりけり」という定家らしい個性的な詠みぶりが、後世において評価されました。
この歌を読む人にとっては、桜の美しさも紅葉の華やかさも何もない、ただの海辺の夕暮れだという言葉が幽玄的にイメージされます。あえて上の句に華やかな春と秋の美しさに言及したあとに、下の句で晩秋の寂しい夕暮れの気色を表現することで、一層、侘しい晩秋の様子を強調している歌となっています。
このような名歌が生まれる晩秋を、皆さんはどのようにお過ごしですか?
やがて来る冬に向けて、さまざまな思いを馳せる季節です。
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