短歌誌『ぬはり』3月号発刊
早いもので2025年も3月になりました。
暦の上では春ですが、例年にない大雪、また岩手県大船渡市の大火災などが続き、酷い被害に胸が痛みます。
岩手県大船渡市には、ぬはり社短歌会の支社があり、多くの会員がいます。
いまのところ、会員の家屋に被害が出たという話は聞こえてきませんが、避難している会員や家族もいるため、油断を許さない状況です。
2011年の東日本大震災に続き、2025年は大船渡大火災と、災難の続く大船渡です。
これからもできる限り支援していきたいと思います。
『ぬはり』3月号が発刊しています。
通巻で1097号となります。
あと3号で1100号を迎えます。
昭和2年から続くぬはり社短歌会には多くの歴史がつまっていますが、こうして節目となる通巻号を迎える度に、短歌という文芸に向き合ってきたぬはり人の先人たちの面影を見つめ直しています。
今回の巻頭の短歌は、創刊者である菊池知勇の次の歌です。
ぬばたまの 夜の山より 生(あ)れいでて
月ただ赤し 葛の葉の上に
大正七年に詠われた短歌ですが、現在ではあまり使われることのない枕詞が使われています。
夜の枕詞である〈ぬばたまの〉という言葉が、歌の格調の高さを表しており、また山の中の月夜の静けさが〈月ただ赤し〉という結句で結ばれ、そのリアルな言葉選びは作者の息遣いが聴こえてくるようです。
安定したどっしりとした言葉遣いで表現されており、その安定感が、夜の山から生まれる月、その月の赤さ、という独自の世界観を支えており、読者を引き込む歌の作りとなっています。
こうした歌がぬはり歌と言われるものですが、それを令和の2025年に生きる私たちは、現代の歌として甦らせることができるはずです。
現代、現在らしい短歌、いつ読んでも新鮮味のある歌というものは詠むのが難しいものですが、それを目指していきたいと思います。
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